人間ってこうなのだ-あればあるだけ限界まで消費するわたしたち
「〇〇の法則」で組織の課題みたいなのを説明されるシーンってあるじゃないですか。そんなことはそれとして、思考のスイッチをたくさん持っているということは、自分のメタ認知を育てることに繋がると思っていまして、世界(あなた自身とその周囲など)の分析が捗りもするものです。そしてそれは人間関係を円滑にし、ビジネスやプライベートといったあらゆるシーンで役に立つ姿勢のひとつです。
さっそくです。「パーキンソンの法則」とは、時間などの資源は可能な限界まで、その消費が膨らむという法則です。具体的には、「仕事の量は、与えられた時間いっぱいまで膨張する」という考え方です。この法則は、イギリスの歴史学者であり作家であるシリル・ノースコート・パーキンソン氏によって提唱され、ビジネスや日常の時間管理に関して多くの示唆を与えています。
パーキンソンの法則の意味
パーキンソンの法則は、仕事やタスクの生産性が時間の制約に大きく影響されることを指摘しています。たとえば、1時間でできるタスクに2時間の時間が与えられると、タスクがその余分な時間を吸収してしまい、かえって時間がかかるという現象が起こります。この法則は、仕事やプロジェクトに対する時間管理の重要性を教えてくれるものです。
パーキンソンの法則を提唱したのは誰か
パーキンソンの法則を提唱したのは、イギリスのシリル・ノースコート・パーキンソン(Cyril Northcote Parkinson)氏です。彼は歴史学者・政治学者であり、さらに作家でもあります。1955年に雑誌「エコノミスト」でこの法則を紹介し、その後、論文「パーキンソンの法則:進捗の追求」の中でも提唱しています。彼はこの法則を発展させ、経済や政治における非効率性の問題を提起しました。彼の洞察は、現代のビジネスや行政機関の運営にも通じるものがあり、多くの人々が彼の理論を活用しています。
パーキンソンの法則ー2つの側面
パーキンソンの法則には、2つの主な側面が存在します。
パーキンソンの第一の法則:仕事と時間
第一の法則は、「仕事と時間」に関するものです。タスクに対して余分な時間を与えると、その時間の分だけタスクが増加し、効率が下がることを示しています。たとえば、1週間で完了する仕事に2週間の期間が与えられた場合、人はその2週間をフルに使おうとし、結果として仕事の完成までに余計な時間がかかることが多いです。この法則は、期限のない仕事がダラダラと長引く傾向を表しており、ビジネスにおいて課題として注目されるものです。
パーキンソンの第一の法則の事例
第一の法則を具体的な事例で考えてみると、たとえば、月曜日に1時間で終わる予定の報告書作成があり、締め切りが金曜日であったとします。この場合、作業が1時間で終わるどころか、金曜日まで時間があることから何度も見直しをしたり内容を追加したりして、結局1時間以上の時間が費やされてしまうのです。時間がある分だけ無駄な作業が増え、効率が悪化するといったことです。
パーキンソンの第二の法則:支出と収入
パーキンソンの第二の法則は「支出と収入」に関するものです。「支出は収入に応じて膨張する」というのがこの法則の核心です。読んで字のごとく、収入が増えたとしても支出がそれに合わせて増加するため、貯蓄が増えにくいという人間の傾向を教えています。
またこのことは、収入の増加が必ずしも資産の増加につながらないと言い換えられます。収入が増えると生活水準を上げる人は少なくありません。結果として手元に残る資金が増えないということがよくあります。収入を増やすことに注力しがちですが、支出を管理することの重要性も、この第二の法則は指南しています。
パーキンソンの第二の法則の事例
例えば、昇給を受けた社員が、昇給分を全て生活費や趣味に使い切ってしまうといったことは、身をもって実感している人は多いでしょう。年収が上がったとしても、その分だけ家賃の高い部屋に引っ越したり、外食が増えたりすると、結局手元に残るお金はほとんど変わらない状態になります。このように、収入が増えるたびに支出も増えるという傾向は、多くの人に当てはまります。
パーキンソンの凡俗法則
「パーキンソンの法則」にはは、第一の法則と第二の法則のほかに、「組織はどうでもいい些細な物事に対して、不釣り合いなほどに重点をおく」というものもあります。第一、第二との関連性が低く、「パーキンソンの凡俗法則」として区別されています。
パーキンソンの凡俗法則の事例
セキュリティやAIなどの知識が必要だったり、膨大な費用が必要だったり、とにかく一般人には複雑とれるような議題は多くの時間を要さないというのは、ひとつの分かりやすい例です。なぜなら一般人は「話し合っている人々は理解して進めているのだろう」と他人事として口を挟まず、一方で強固な意見を持っている人は一般人に対して理解させる気がない、情報のアラを見せたくないなど、理由はともかく言いくるめることもあります。結果として議論は粛々と時間をかけずに進んでいきます。
議題が「自転車置き場について」だった場合はどうかというと、屋根の素材は何が良いか、色はどうするかなどの些細な話題が議論の中心となり、本質的な「自転車置き場はそもそも必要か」といった話題はスルーされます。自分では理解していると思っている自転車置き場の設置については、その場にいる誰しもが何かしら前のめりに口を挟み、結果として本質的ではい議論に多くの時間を費やすというわけです。
パーキンソンの法則を回避する対策
パーキンソンの法則を理解した上で、これらの現象を防ぐための実践的な対策について、ビジネスのシーンを例に示します。これはプライベートでも応用できるものです。
与えられたタスクではなく仕事業に合わせて期限を切る
まず、与えられた時間に応じて仕事が膨らむのを防ぐために、事前に仕事量に合わせた計画を立ててみましょう。タスクの内容とそれにかかる時間を推量して、自分で期限を設定するのです。期限に合わせた仕事ではなく、仕事量に合わせた期限で、時間というリソースをコントロールします。
タイムマネジメントに自信がないなら時間区切りを行う
自分で設定した期限があってもなお、効率的に業務を行うことが難しい場合は、短い時間に区切って集中作業時間を設けることも効果的です。集中して作業を行う時間と休憩時間を交互に設けることで、ダラダラとした仕事を防ぐことができます。
パーキンソンの法則を無効化し続けよう
パーキンソンの法則は、仕事やお金が与えられたリソースに応じて膨張してしまうという人間の習性を示しています。この法則を理解することで、仕事の効率を高めたり、無駄な支出を抑えることができるでしょう。自分で計画を立て、適切な締め切りを設定し、時間管理を行うことで、パーキンソンの法則に振り回されることなく目標を達成することが可能です。